藍藻(シアノバクテリア)について

藍藻(シアノバクテリア)は、光合成により酸素を発生し、この地球上を現在のような酸素にとんだ環境に変えた立役者です。そして、真核生物の細胞内に共生することにより葉緑体となり、地球上に繁栄する植物へと進化しました。この生物こそが、現在の地球環境とその中の生態系を現在見られるものへと変えたのです。昔は「藍」の字が常用漢字に入っていなかったので「ラン藻」「らん藻」とも表記されましたが、平成22年の常用漢字表の改訂によって「藍」の字が追加されたので、晴れて藍藻と書けるようになりました。しかし、真核生物である他の藻類、例えば緑藻や紅藻とは異なり、原核生物(バクテリア)の一種であることから、教科書などではシアノバクテリアの表記が一般的になっています。藍藻はそこらの水溜りにも、場合によっては芝生の上にも見られます。

引用元:「藍藻の分子生物学」の研究集会HP|「藍藻とシアノバクテリアについて」

ピロール農法とは

概要

ピロール農法とは、土壌にピロール資材を混和させ、土壌に元々生息していた独立栄養微生物である藍藻(シアノバクテリア)を繁茂させ、有機栄養分が豊富な土壌を醸成するとともに、ミネラル分を植物が吸収しやすいキレート化合物に積極的に変え、健康で栄養豊富・高ミネラルな農作物を生産する農法です。

ピロール資材は有機物、生石灰と独自の微量要素を混和させた高アルカリの資材で、これを土壌に施すことにより、藍藻類を中心とする独立栄養微生物の増殖を促します。これらの微生物は、カビなど一般微生物の有機物を餌(エネルギー源)として増殖する従属栄養微生物とは異なり、自ら光合成をおこない、太陽エネルギーを自らの生命活動のエネルギーにする独立栄養微生物です。この独立栄養微生物が強力なキレート物質を産出し、それが作物のカルシウムやその他のミネラル物質の吸収を飛躍的に高めます。また、カビなど一般微生物は酸性の雰囲気を好みますが藍藻はアルカリ性を好みます。

ピロール資材は微生物資材ではなく、pHやミネラル環境を整えることによって、田畑の土壌にもともといる土着の独立栄養微生物の増殖を助けるものです。いわば、人間にとって有益な効果をもたらす腸内細菌(プロバイオティクス)とその栄養源となりそれらの増殖を促進する食品成分(プレバイオティクス)に相当します。

このような独立栄養微生物が豊かな土壌で育った農作物はミネラルが豊富で、健康な作物 すなわち日持ちの良い作物になるというわけです。

(引用元:資料1)

藍藻の働き

ピロール資材は藍藻の増殖を助ける資材です。藍藻は中性から弱アルカリ性を好み、またミネラルバランスが整っているとよく繁殖します。ピロール資材はこの特性をふまえてつくられています。

ビンの中にピロール資材を混ぜた土壌を入れ、これに水を加えて1~2週間おいておくときれいな赤色を呈し、その後しばらくすると緑色に変わってきます。当初は紅色硫黄細菌や緑色硫黄細菌ではないかと考えられたが、これらは藍藻類であるということが判りました。赤色と緑色は種類が違い生成する成分も異なりますが、それぞれ藍藻だったのです。

ピロール資材による土壌試験

これら藍藻の働きは次のようなものです。

  1. 光合成によって有機物を供給し、それが他の微生物のエサとなり、微生物層を豊かにする。
  2. 光合成によって酸素を供給し、根や他の微生物に良好な環境をつくりだす。(酸素が供給されるためか、ピロール農法による稲の根は白い)
  3. ある種の藍藻は粘質な物質を分泌し、土壌の団粒化を促す。
  4. ある種の藍藻は窒素固定を行い、土壌の肥沃化に貢献する。(熱帯の水田では藍藻によって年間10アール当たり1~8kgの窒素を固定しているという)

この藍藻は有機物がない不毛の地や岩石でも、水分があれば生育します。そこに光が当たれば光合成により、藍藻は有機物を生産し、他の微生物が増殖する条件をつくり、土を肥沃化していきます。

この古代からの藍藻の力を現代に活かす、それがピロール農法の主眼です。

藍藻の作用効果1

藍藻の作用効果2(CO2, CH4, NOx)

縦横1m, 高0.5mの箱の中に水田の土とピロール資材を混合してビニールシートで覆い、太陽光の下に置いて、中の空気の成分分析を行った。

二酸化炭素濃度(ppm)

メタン濃度(ppm)

窒素酸化物(ppb)

藍藻の作用効果3

水質の浄化

  • 発がん物質トリハロメタンで、飲料水があぶない。
  • 浄水場では塩素系薬剤をろ過液に注入する。その時トリハロメタンが生成される。
  • 藍藻の繁茂する土壌には、農薬だけでなくトリハロメタン類も検出しない。

(引用元:資料1、資料2)

特徴

  1. 作物の根張りがよくなる
  2. 作物が病気に強い
  3. 土壌が浄化できる(有害化学物質が減少する)
  4. ミネラル豊富な栄養豊富の作物ができる
  5. 味が旨い
  6. 作物の日持ちが良い
  7. 弱アルカリ性の作物ができる
  8. ORAC=活性酸素吸収能力(抗酸化力のこと)値が高い
  9. 硝酸態窒素が少ない
(1)消費者にとって
  • 美味しい。栄養豊富。鮮度を比較的長い期間保てる。
  • アレルギーが改善された、腸内が快調になった、などの報告が多い。(科学的に証明されている訳ではありませんが)
(2)生産者にとって
  • 従来の農薬を多用する農法と比較して土壌が疲弊しない。それどころか、土壌に含まれる有害有機物(例:トリハロメタン)を分解し土壌を蘇らせる。
  • 従来の有機農法に比較して、長期保存に耐え栄養豊富で美味しいといった特徴のある作物、すなわち高付加価値の商品を市場に提供出来る。
  1. ミネラル分が多い
  2. 弱アルカリ性である。
  3. 劣化がおそい。いつまでも新鮮である。
  4. 不飽和脂肪酸の比率が高い。
  5. アミノ酸のバランスが良い。

(引用元:資料3)

データ例

野菜に含まれる硝酸塩濃度の差異

硝酸塩は、通常摂取する程度ではそれ自体、特に人体に有害なものではありません。しかし、ヒトの体内で還元され亜硝酸塩に変化すると、メトヘモグロビン血症や発ガン性物質であるニトロソ化合物の生成に関与するおそれがあるということが一部で指摘されています。この硝酸塩の総摂取量のうち、添加物としての硝酸塩はそのうちわずかで、野菜由来のものがほとんどです(*)

(*)農林水産省:野菜等の硝酸塩に関する情報より

以下に、ピロール野菜の分析結果を一般野菜等と比較して示します。ピロール野菜は、ガンを誘発すると⾔われる硝酸塩濃度が、⼀般野菜に⽐べ激減しています。さらに、抗酸化作⽤が⾼いため野菜が腐りにくく、⼀般野菜に⽐べ鮮度が⻑続きし、腐りにくく鮮度が⻑く保たれる野菜としてビストロレストランのシェフたちに⾼い評価を受けています。

硝酸根(ppm)ピロール野菜一般野菜減少率(%)東京都分析 平均値*
シュンギク1,3004,150△68.73,100
コマツナ2,0504,700△56.44,300
ハクサイ2,2502,900△22.41,100
ホウレンソウ1,9503,550△45.12,400
ルッコラ8006,100△86.9
カブ100300△66.71,300
ニンジン4501,050△57.1380
ダイコン7507500.01,500
ニラ1,2002,400△50.0460
ピロール野菜
ピロール農法で生産した野菜
一般野菜
食品スーパーで購入した野菜
東京都分析 平均値*
東京都健康安全研究センター研究年報 第58号 (2007)「野菜類等の硝酸根、亜硝酸根含有量調査」より
分析方法
RQフレックスを用いた野菜中の硝酸測定の簡易マニュアル(農研機構)
測定者
登丸雅英(工学博士, 環境計量士)

玄米中の成分比較

項目ピロール玄米一般玄米 
水素イオン指数pH 7.4pH 6.7
カルシュウム16.3mg/100g10.0mg/100g+63.0%
マグネシュウム135.8mg/100g110.0mg/100g+23.4%
2.0mg/100g1.1mg/100g+81.8%
亜鉛0.89mg/100g0.76mg/100g+17.1%
ビタミンB10.75mg/100g0.54mg/100g+38.8%
ビタミンB20.12mg/100g0.06mg/100g+100.0%
ビタミンB120.05〜0.08μg/100g0.00μg/100g
*ビタミンB12は、ピロール米にのみ検出。

(資料提供:株式会社エルゴン(PJA会員企業))

ピロール米摂取による骨密度改善例

骨密度測定において、59歳時点で大きく日本人女性の平均値を下回っていた被験者女性が、弱アルカリ性ピロール米に切り替えたところ約半年で骨密度に改善が見られ、10ヶ月後には平均値を上回る改善がみられた一例。

ピロール米摂取に伴う骨密度の推移
測定日骨密度(g/㎠)
1回目 2004/05/150.682
2回目 2012/07/310.593
3回目 2013/03/150.611
4回目 2013/08/060.641
5回目 2014/07/140.605
6回目 2015/02/100.605

(資料提供:有限会社カーサプランタ(PJA会員企業))

ピロールの名前の由来

本農法をなぜピロール農法というか、それはこの農法が生命の基本的な単位であるピロールという化学物質に着目しているからです。

ピロールとは窒素を含んだ五員環化合物の総称です。この五員環化合物は葉緑素のクロロフィルや血液のヘモグロビンを構成する重要な要素の一つです。自然界にはこのピロール化合物を含んだものが多数存在し、動植物では生命活動の基本物質になっており、しかもそれが食物連鎖によって循環しています。

ピロール構造式

例えば、葉緑素はピロール環が環状に結びついているが、それが食べられて消化されたりすれば環状の結びつきが壊れてピロール環が鎖状に並んだビリルビンになり、これは動物の排泄物(糞尿)に多く含まれています。それがさらに分解するとピロール環の単体となり、その単体がさらに分解すると酢酸などの有機酸になったり無機物になったりします。堆肥などにみられる有機物の分解はこの流れです。

これに対して、藍藻という独立栄養微生物が介在すると、そのメカニズムは未だよくわかっていませんが、光エネルギーを利用して開環したピロール環が鎖状に並んだものを環状に戻すのです。

すなわちビリルビンを葉緑素に戻すわけです。そしてこの葉緑素のようにピロール環が環状に結びついた化合物はミネラルと結びつきやすく(キレート化合物)、植物がミネラルを容易に取り込みやすくすします。

このような意味でピロール農法は、堆肥を利用する有機農法とはピロール環化合物の合成過程を使うか、分解過程を使うかという意味で大きく異なります。

(引用元:資料1)

有機物の分解の流れ

土壌改良のメカニズム

一般に動物や植物が死んだり食べられたりすると、動物のヘモグロビンや植物のクロロフィルは、分解してビルビリンとなり、土に還ります。ビルビリンは4つのピロール環が横に並んだ構造になっており、動物の排泄物(糞尿)に多く含まれています。野菜を食べれば、そこに含まれているクロロフィルが腸内細菌によって分解され、ビリルビンとなって排泄されるからです。また、葉が枯れてクロロフィルが分解されるとやはりビリルビンになります。

堆肥などにみられる有機物の分解とはこの過程のことで、これを担っているのが他から栄養分を必要とする従属栄養微生物です。ビリルビンはさらに分解されると1個のピロールとなり、さらに分解が進めば酢酸などの有機物になります。

これに対して、独立栄養微生物である藍藻が関与するとビリルビンは、一個のピロールにさらには酢酸などに分解されるのではなく、全く違った過程をたどることになります。光合成をおこなう藍藻はその過程で酸素を奪う還元作用を示し、これによってビリルビンは元のクロロフィルやヘモグロビンに戻るのです。

土壌改良のメカニズム

光合成においてはクロロフィルが光エネルギーを吸収し、そのとき還元物質を経てこれから生体エネルギーであるATPや糖がつくられます。藍藻は光エネルギーを利用して二酸化炭素を還元し、すなわち酸素を奪い、水素を与え、炭素と水素が結びついた有機化合物をつくります。そして、この還元物質を作るのに必要な水素は水を分解して得ています。水を分解して水素を取り込み、酸素は大気に放出されます。

この還元作用により動植物の分解物質であるビリルビンは藍藻の存在で再びクロロフィルになり植物の形成に役立つことになるのです。藍藻の多い土壌で育成した作物は、一般に葉の緑色が鮮やかで成長も速いのです。藍藻も光合成の過程で土壌中の栄養物などを増やし、それらを利用することにより自らの光合成を高めて増殖していきます。

土壌中ではヘモグロビンやクロロフィルからビリルビンへの分解反応と逆生成反応が並行して行われています。しかし、分解反応より生成反応のほうが優勢なのが藍藻の豊富な土壌なのです。このような土壌では藍藻の光合成反応により土壌環境が整備されていくのです。

(引用元:資料2)

参考情報 資料

資料1

  • −高カルシウム作物を作る− ピロール農法
  • 酒井弥/著
  • 農文協|民間農法シリーズ
  • ISBN|978-4-540950-85-8
ピロール農法|酒井弥/著

資料2

  • ラン藻で環境がかわる −劇的! 農薬・ダイオキシン分解も−
  • 酒井弥/著
  • 技法堂出版
  • ISBN|978-4-7655-0234-1
ラン藻で環境がかわる|酒井弥/著

資料3

  • ピロールジャパン研究開発状況 (2016年全国ピロール大会資料)
  • 登丸雅英/著
  • 横浜国大、PJA理事
2016年全国ピロール大会資料|登丸雅英/著